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石窯で焼く、島の小さなパン屋さん

Paysan(ペイザン) 求 光章さん ゆう子さんご夫妻

石窯で焼く、島の小さなパン屋さん
石窯で焼く、島の小さなパン屋さん

最初は、「田舎暮らしがしたい。」という小さな夢だったという。物件を探し始めても、思い描く土地にはなかなか出会えず諦めかけた時、インターネットで瀬戸内の島の物件が目に留まる。四国旅行がてら見に行ってみると、まさに理想とする環境がそこにあった。小高い丘の上に立つ小さな家。裏山を越えると海が広がる。「ここで暮らしたい!」

移住当初、光章さんは家族を養うため勤めに出ていたそうだ。しかしひとつの壁に当たる。固定収入は入るが時間に追われる日々。子供たちとゆっくり過ごすこともままならない。これでは何のために田舎に来たのかわからない。そこで、以前和歌山の知人の元で身に付けたパン作りの技術を生かし自宅でパン屋を開こうと思い至る。石窯、工房、店づくりは島の友人たちが手伝ってくれた。作業は大変だったが、周囲の「キューちゃんの作るパンは美味しい!」という声に後押しされた。はじめから手ごねと手作りの石窯で焼くパンにこだわったというわけではないらしい。手ごねにしたのはミキサーを買うお金がなかったから。石窯を手作りしたのはオーブンを買うお金がなかったから、というのが面白い。しかし、それが結果的には美味しいパンを生みだすことになった。ペイザンのパンはオーガニックレーズンから起こした自家製天然酵母を使い、原材料はできる限り安全で体に優しい食材。石窯で焼くため外はカリッと香ばしく、中はふっくら。口コミで広がり今では行列ができる人気店となった。

パン屋としての営業は週に数日。残りの日も、薪集め、パンの仕込み、工房の改築などなかなか多忙だ。都会にいたころに夢見ていた「田舎でののんびりした農夫のような暮らし」とは少し違うのかもしれない。しかしペイザンに集まる笑顔、響く笑い声、夫妻の周りには常に多くの仲間がいる。最初、「こんなところでパン屋??」「生活は大丈夫??」と驚いたり心配したりしてくれた地元のおじさんやおばさんも今ではすっかりペイザンのパンのファンだ。
 阪神淡路大震災で被災したことをきっかけに夫妻は考え続けた。「本当の幸せって何?本当の豊かさって何?」その答えは、この瀬戸内の小さな島で見つけられたかもしれない。この島にはペイザンがある。

※この記事は、2015年に今治市が発行した「今治スタイルVol.01」の掲載内容を一部修正したものです。

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