製靴 暁 中田 克郎さん

この道で合っているんだろうか?と不安になりつつ細く急な坂をのぼる。小高い丘の上の小さな集落に中田さんのアトリエがある。足を採寸し、世界にひとつだけの自分の足にぴったり合う靴を作る。
中田さんは大学でプロダクトデザインを専攻し、卒業後は神戸の製靴メーカーで18年間婦人靴の企画を担当していた。独立という夢を叶えるべく会社を退職し、大阪にある製靴学校へ通った。そこで80代の現役靴職人のもとで基礎から学び直す。地元の関西や東京で独立、開業することも考えたが、大都市にはニーズはあるが同業者も多い。その中で埋もれてしまうよりも、自分の好きな土地で突出する方がいいのではないかと地方移住を考えた。中田さんは幼少期を今治市内で過ごしている。中学時代に大阪へ引っ越したが、親戚の住む今治には時々帰省しており、しまなみ海道沿いの島も馴染みのある場所だったそうだ。
2015年大島、吉海町に移住。古い民家をリフォームして靴のアトリエにした。忙しい靴づくりの合間を縫って机や棚なども手作りしている。そのセンスと出来栄えはプロ顔負けで「子供の頃から工作好き、将来はものづくりに関わることがしたかった。」という言葉に納得。ハンドメイドの靴は履いた人と一緒に育っていく。履くほどに足に馴染み、味のある風合いになっていくという。中田さんのアトリエも、そんな風にこの地に馴染みお客さんと一緒に育っていくのだろう。
※この記事は、2015年に今治市が発行した「今治スタイルVol.01」の掲載内容を一部修正したものです。