アンディさん 渡邊祐子さん ご夫妻

峠を越えると、広い庭にぽつんと赤い屋根と緑の壁が愛らしい木造の小さな家が現れる。
ここ「友浦サイト」は渡邊祐子さんがカナダ人のご主人アンディさんと島の仲間たちの協力のもと2014年に開いたカフェだ。
アジア旅行の途中訪れた日本をとても気に入り、カナダから東京に移り住んだアンディさん。そこでバリバリのキャリアウーマンだった祐子さんと知り合う。そして国際結婚へ。子供ができたら自然豊かな田舎で子育てをしたいと思っていた二人は、長女の誕生をきっかけに、東京から祐子さんの出身地である今治への移住を決意した。
住む場所を探してさまざまな島をめぐったアンディさんが感動したのが大島の南側の海岸線。“友浦”という地区だった。海が見える小高い丘の上にカナダの輸入住宅を建てた。20年前の当時にはとても珍しく、完成時は観光バスで見学ツアーまでやってきたという逸話もある。
アンディさんは、自宅で経済ニュースの翻訳の仕事をしている。経済の専門知識も当然必要、毎朝締め切り時間内に入稿する必要があり、想像以上にハードそうだ。しかし、家族と一緒に居られること、この素晴らしい環境に身を置けることは、それ以上の価値がある。
一方、今治出身といっても市街地で生まれ育ち、島暮らしの経験はなかった祐子さん。大島に移住してからは専業主婦として子育てに専念してきた。子育てがひと段落した頃、島をもっと盛り上げようと地元の活動に積極的に参加しはじめる。その活動を通じて「自分にももっと何かができるんじゃないか」と考え始めたという。
空き家だった古民家を借り、自分たちの手でカフェとして蘇らせた。大工仕事はアンディさんを中心に仲間たちが手伝ってくれた。「新品を買ったのは照明やペンキくらいであとは解体した家や建物の廃材をもらってきた」 床も自分たちで張ったという。およそ1年半かけてカフェ「友浦サイト」が完成。店内は海外アンティークを思わせるどことなくノスタルジックな雰囲気の家具や小物がさりげなく配置されている。ランチやスイーツが人気だが、週末は地元農家の無農薬野菜や果物、島で採れたハチミツなども販売するいわば小さなマルシェの役割も果たしている。この島に移住して20年。Iターンの大ベテランが、地元を盛り上げる場をつくった。
※この記事は、2015年に今治市が発行した「今治スタイルVol.01」の掲載内容を一部修正したものです。