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きれいな景色が叶えたもの…鷲尾優美さん

きれいな景色が叶えたもの…鷲尾優美さん

東京都→大島 | Iターン | 島暮らし | 起業 | ワイン店経営

鷲尾優美(わしお ゆみ)
enotecaNATURALE・株式会社しまなみライトハウス/2019年移住/高知県出身

「東京はもういいんじゃないか」そんな夫のひとことから始まった鷲尾優美さんのしまなみ島暮らし。海のそばの景色のきれいな場所へと2019年に家族3人で大島へ移住、夫婦で起業する傍ら自宅の敷地で自然派のワイン専門店も開業。仕事の合間には小学生の息子さんの送り迎えをしたり、犬の散歩をしたり、庭仕事をしたり…。美しい瀬戸内の海の景色とともにある日常の暮らしは忙しくも愛おしい。

 もともと引っ越しの多い人生だという鷲尾さん。生まれ育ったのは高知県、高校時代にはすでに1人家を出て下宿しながら学校へ通い、大学時代は神戸、就職は東京、結婚後はご主人の仕事で2年ほどアメリカ・サンフランシスコに住み、帰国後は横浜、そして東京…と、本当にめまぐるしいほどの引っ越し歴です。そんな鷲尾さんですから、「移住」を特別なものとは感じていませんでした。

きれいな景色のなかで暮らしたい

 そもそもの移住のきっかけは、ご主人の「東京も長いし、もういいんじゃないか」という言葉でした。当初はそれほど乗り気ではなかったという鷲尾さんでしたが、いつしか東京にストレスを感じていることに気づきました。例えば、出勤前に自転車で息子さんを保育園へ送り届けて駐輪場へ向かうと、既にあふれるように自転車が停まっていたり、休日にキャンプへ出かければ現地への往復で6時間かかるなど…。

 圧倒的な人の多さ、狭さ、暮らしの中の窮屈さが心に澱となって溜まっていくような生活を振り返った時、思い出したのはサンフランシスコでした。郊外の自然のなかで暮らしていた頃のように「毎日きれいな景色を見ながら生活するのもいいな」そんなふうに思ったといいます。

 こうして移住を決めた鷲尾さん。移住先は親のことも考えご主人の出身地の兵庫と、鷲尾さんの出身地である高知との中間あたりにすることに。兵庫県の淡路島は大きすぎる、香川県の小豆島も良かったけれど、最終的にしまなみ海道エリアを選んだ決め手は、やはり橋でつながった安心感でした。

 エリアが決まれば、次は物件探しです。旅行でも海のある場所を選ぶほど海が好きだったという鷲尾家の条件は、「景色がきれいで歩いてビーチへ行ける場所」。当初希望した大三島では理想の物件が見つからず、地元の工務店の情報からたまたま出会ったのが大島の静かな海沿いの集落の土地でした。そこに家を建てることに決め、息子さんの小学校入学に合わせ2019年に移住。家の完成を待ちながら大島の移住促進住宅で過ごし、ついに完成したのは、海に向かって大きな窓のある広々とした家。目の前にきれいな海の景色が広がる暮らしが始まりました。

島での暮らしと子育てへの思い

 「予定としては日々の食器にもこだわるような“丁寧な暮らし”になる予定でしたが、意外と忙しいですね」そう鷲尾さんが苦笑するのは、島の日常のこと。保護犬2匹の散歩や息子さんの習いごとの送り迎え、夏になれば庭の植物や手強い雑草の手入れも必要です。イメージしていたのんびりとした田舎暮らしとはちょっと違ったようですが、「都会で生活を維持するためにフルで働くよりは自分たちの時間がある」とも。

 鷲尾さんは移住して間もなく、ご夫婦で会社を立ち上げました。ご主人はシステムエンジニア、鷲尾さんはマーケティングリサーチと、それまでの2人のキャリアを活かしての起業です。パソコンがあれば全国どこでも仕事ができることから、東京の企業などから業務委託で仕事を請け負います。会社勤めのように勤務時間に左右されず、窓の景色を眺めながら仕事ができる環境があり、そして子育ての面でも今の暮らしの良さを実感しているようです。

 東京では小学校から当然のように受験戦争が始まります。たとえ参戦しなくとも、周りの緊張感に親子ともに落ち着かなくなるのでは。実は鷲尾さんは移住前からその点を懸念していました。もとから自然が大好きで活発な息子さんです、今は家から出ると目の前に海があり、いつでも泳げて釣りもできる、そんな生活をのびのびと楽しんでいるそう。バスケットボールのチームにも入って練習にも打ち込んでいます。

 「私も田舎に育って社会へ出たので、子どもの頃の自然の中での思い出は、大人になって糧になる、誇れるものだと思っています。学歴など世の中競うものはたくさんありますが、楽しい思い出や経験は誰かと比較するものではない、誰にでもできる話です。そういうものを子どもに与えられているんじゃないかと思います」子ども時代の宝物のような日々と過ごす今の暮らしは、鷲尾さんの充実感にもつながっているようでした。

おいしいワインをきれいな景色とともに

 鷲尾さんには自然派ワイン専門店のオーナーというもうひとつの顔があります。店の名前は「enoteca NATURALE(エノテカ・ナチュラーレ)」。ワイン好きの鷲尾さんに「そんなに飲むなら仕入れて売ればいいじゃないか」と、ご主人が自宅の敷地にプロ顔負けのセルフビルドで店舗を造ったというから驚きです。接客スペースの奥にはワインセラーも備えています。2022年のオープン以来、しまなみ海道沿いの島の方や旅行者はもちろん、今治市内外からもワイン好き、お酒好きがわざわざ通います。

 「いい景色を見ながらお酒を飲むは最高ですよね」と鷲尾さんが語ってくれたのは、学生時代の旅のこと。フランスを代表するワインの産地ボルドーを訪ね、自然豊かなシャトーで味わったワインの美味しさ、それはその場でしか味わえないものでした。以来、世界のワインの産地を旅するようになったそう。鷲尾さんのお店では海を望むオープンデッキで角打ちも楽しめます。しまなみの景色とともに味わうワインは、鷲尾さんがボルドーで味わった感動に似ているのかもしれません。

 自分たちにとって心地よい暮らしを叶えるために、住む場所を選び、楽しみを作り出している鷲尾さん。「あなたにとって心地良い暮らしとは?」そんな問いかけをもらったようにも思います。島、海、山、町、多様な環境のあるこの今治で理想の暮らしを叶える人が増えたら、今治はきっともっとおもしろくなっていくでしょう。鷲尾さんの姿から、そんな可能性を感じました。

取材日:2024年11月(掲載の情報は取材日時点のものです)

移住Q&A 先輩に聞いてみました

Q 移住先を決めるのに大切なことは?

A 移住先は、自分が心地良いと感じられる景色、環境か。移住先での理想の暮らしを思い浮かべられるか。最も理想的な暮らしが実現できなかった場合の次善案があるか。必要とする生活インフラへのアクセスは許容範囲か(教育機関、医療機関、等)。地方故の生活コスト増(交通費、ガス代、輸送費等)を許容できる収入を現地で維持できるか。

Q 今治で暮らす魅力はどんなところ?

A 自然が好きな人であるならば、とにかく景色が美しい。
穏やかな内海、多島美、四国方面を眺めると石鎚もある。旅行好きな人にとっては、広島方面、四国方面双方にアクセスがよく、空港も複数選べる。食に関しては、魚介が美味しいのももちろん、野菜・果実も珍しい品種が多く栽培されている。食べ歩きするにも、昔から地域の人に愛されている飲食店や、若い人が始めたこだわりの店もあり、飽きることがない。
我が家は小学生の子供がいるが、学校の体験活動が充実しているように思える。また、放課後の活動が高学年には1年を通して用意されており、習い事をするまでもないが、体を動かしたい、楽器を演奏したいという子の行き場となっている。

移住を考えている方へメッセージをお願いします!

興味があるなら踏み出してみてはいかがでしょう。
移住というのは1 way 切符ではなく、合わなければより合う場所を探しても良いし、元いた場所に戻っても良いので。国内で言語も文化も変わらないから、実際ちょっとした引越しと変わらないと思います。そのための仕組みもあります(移住促進住宅等)。自分さえオープンマインドでいられるなら、新たな友人との出会いもきっとあります。
場所が旅先としても魅力的なので、想像以上に古い友人が訪ねてきてくれるので、寂しいと感じる暇はないと思います。

-先輩移住者の声
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