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「やってみたい」から始まる新しい暮らし…小川幾子さん

「やってみたい」から始まる新しい暮らし…小川幾子さん

京都府→伯方島 | Iターン | 島暮らし | 就農・起業 | 柑橘農家・商品開発と店舗経営

小川幾子(おがわ いくこ)
OMOYA./2023年移住/京都府出身

伯方島の柑橘を知って以来、その味のファンに。高齢化のため離農することになった柑橘農家に事業継承を申し入れ、2023年に一家7人で伯方島へ移住。夫の竜也さんは未経験から就農、幾子さんは破棄される柑橘から自社商品を開発し、販売所「OMOYA.」を立ち上げる。2024年には伯方島でマルシェを企画するなど、「やりたいと思ったことはやってみる」の精神で島を盛り上げる存在に。

 「もうここにずっと住んでいるような感覚なんです」と話すのは、小川幾子さん。親しみやすい笑顔が確かにこの場所にすとんと馴染んでいる、そんな印象があります。幾子さんが京都から伯方島へご家族と越してきたのは、2023年の4月。幾子さんとご主人の竜也さん、そして下は就学前から上は中学生という5人の子どもたちの7人家族、大所帯での移住はなかなか大きな人生の選択では?「たぶん私らアホやと思うんですよね(笑)」と、そのきっかけを話してくれました。

島の柑橘の味に導かれて

 「息子の友達のお母さん、“ママ友”のおじいさんが伯方島でみかんを作っておられて、それがおいしくて」と幾子さんが語るところによると、京都で焼肉店を営んでいた小川さんご夫婦は、農家の友人から野菜を仕入れており、そのおじいさんが作る柑橘も届けてもらっていたそう。ある時おじいさん(藤原さん)が、高齢のため柑橘の栽培を辞めるのだと聞いた幾子さん、「ちょっと待ってください、伯方島へ行きたいです」すぐにそう伝えたといいます。

 住み慣れた京都での暮らしから、行ったこともない伯方島で未経験の農業を始めるなんて、端から見れば突拍子もない話です。ところが幾子さんから話を聞いた竜也さんは、「僕が愛媛へ行ってみようと思う」そう言ったというから驚きです。実は竜也さん、海が見える場所で田舎暮らしをしてみたいという密かな夢があったというのです。

 言ってみてダメならあきらめよう、そんな思いもありました。が、新型コロナウイルスの流行が落ち着いた2022年の5月、藤原さんから声がかかり竜也さんと伯方島で顔合わせをすることに。すると、島へ来るのならと空き家を紹介してもらえることになり、その年の秋に初めて家族で伯方島へ…とトントン拍子に話が進みます。「当初は夫だけ単身赴任の予定でしたが家が見つかったので、あとは仕事があれば家族で生活できると思って」と幾子さん、なんと初訪問の伯方島で介護施設を直接訪ね、仕事まで決めてしまいます。

始まった伯方島での暮らし

 家族そろっての移住を果たし、幾子さんは島内の介護施設で働き始めました。農業未経験の竜也さんは、柑橘栽培のノウハウや技術を身につけるためJAおちいまばりの農業研修を受けながら、藤原さんからも柑橘栽培を実践で学ぶ生活がスタートします。

 この木はいつ植えて、この木はあの時に…と、まるで柑橘の木を我が子のように慈しむ藤原さんの教えは竜也さんにも感じるものがあったよう。植えた苗が枝葉を伸ばし育っていく様子がかわいいと目を細め、「百姓は百のことができる人のこと。だから僕は農家ではなく百姓を目指す」と、藤原さんや周囲のベテラン農家の方の話にすっかり感銘を受けているといいます。

 しかしいざ柑橘農家になってみると、今まで見えなかったことに気づきます。減農薬で栽培する藤原さんの柑橘は、傷が目立ち売り物ならないもの、廃棄されるものが多く出てしまうのです。「中身はおいしいのにもったいない」その時幾子さんの目にとまったのが、自宅の敷地にある古い納屋でした。

柑橘の廃棄をゼロに 「OMOYA.」の立ち上げ

 「この納屋を販売所にしよう」思い立つと即行動するのが幾子さんです。廃棄柑橘ゼロを目指した商品開発に挑戦することに。柑橘の味に惚れ込んでの移住ですからひとつも無駄にしたくない、その思いがエネルギーになりました。

 とはいえ商品作りは全くの素人。京都や島の知人の助けを借り、実や果汁はアイスクリームやゼリー飲料に、皮はアロマセラピーの精油にし、どれも柑橘そのものの味や香りを損なわないようこだわりました。パッケージにも力を入れたのは、伯方島産の商品を島の方にも贈り物として選んでもらえるようにとの思いから。自らリノベーションした納屋に並べ、2024年5月に販売所「OMOYA.」がオープンします。

 OMOYA.を訪ねてくるお客様はサイクリストや観光客のほか、地元の方も多いそう。幾子さんによると、店名の由来は家の屋号。「昔は家々に屋号があって、この家は“母屋”と呼ばれていたと聞きました」屋号が懐かしいと地域のお年寄りが立ち寄って昔話に花が咲きます。

 また竜也さんの師匠の藤原さんは、農家を辞めると言っていたのが嘘のように復活。竜也さんと分担しながら今も柑橘栽培に精を出します。OMOYA.の理念は「島の豊かな自然を活かし、農業の技術を継承し、できた農産物を活用して次世代へと引き継ぐ」こと。OMOYA.は農産物だけでなく、周りの人の心も惹きつけて再生する場所になっているようです。

 何事も体当たりで道を切り開く幾子さん、そのパワーはどこから?「頭に浮かんだやりたいことは、可能性があるならやってみた方がいいと思うんです」とさらり。人生はいつ終わるかわからない、そんな思いが心にあるといいます。

 付き合わされる子どもたちがどんな大人になるか楽しみ、と幾子さんは笑いますが、島暮らしに馴染み始めたお子さんたちもご夫婦の背中を追って伯方島でたくましく育っていくことでしょう。

取材日:2024年9月(掲載の情報は取材日時点のものです)

移住Q&A 先輩に聞いてみました

Q 幸せを感じるのはどんな時ですか?

A いつも感じています。大変なことがあっても意味があると思い、あまり悲観しない性格なので(笑) 支えてくれる家族がいて、ご飯が食べられて、挑戦したいことを応援してくれる方々がいて。周りの方たちのおかげで、私は幸せです。

Q 地域に馴染むために心がけたことはありますか?

A ご近所の方も親切な方ばかりでした。ゴミの出し方から学校のことまで、今までと違うことも多かったので、教えていただけてとても助かりました。
はじめましての時は、まずは私(私たち家族)のことを知っていただけたら嬉しいなと思い、世間話などをよくしていました。

今治へ移住を考えている方へメッセージをお願いします!

子どものお迎えの帰りに、海辺で夕日を眺めながらアイスを食べる。私の大好きな時間です。こんな生活ができるのは島生活だからこそと感じました。
「見て!空のオレンジきれい!」「今日の海めっちゃキラキラしてる」電線がない広い空を眺められるってすごい贅沢なことだって気づきました。ぜひ、海辺でのアイスご一緒しませんか?

-先輩移住者の声
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